「ウェーバーからハバーマスへ」ーアソシエーションの地平著者 佐藤慶幸 世界書院 1988年

 

現代社会は様々なファクターが輻輳し、社会学的な分析方法を駆使しなければ的確に真相を把握することが不可能な時代となっているといわれている。現代は高度に発達した産業社会であり、情報化の時代といわれており、特に日本社会はそれに加え、国際化と急速な高齢化社会を迎えている。この現代日本社会の特質は官僚制機構による高度の管理社会であるということができる。日常生活の諸側面にわたり意識的にも、無意識的にも管理統制された社会である。本書の主題は、こうした現代社会の文脈において、人々の間の自由な「連帯」はいかにして可能になるか、社会学はこの問題定立に対していかに答えうるかということにある。本書のタイトルが「ウェーバーからハバーマスへ」となっているが、著者自身は「アソシエーションの地平」あるいは「アソシエーションと対話的行為」を書名の主題としたいといっているように、自発的な主体的意志による対話的行為を通しての人と人との間のアソシエーションこそが、人間疎外を生み出している官僚制に対抗する、理論的実践的なパラダイムであることを論証している。ウェーバーにより目的合理性、ハバーマスにより対話的合理性を象徴させ、官僚性管理社会の基礎となる目的合理性に対抗するアソシエーション社会の基礎である対話的合理性こそが、眼に見えないところで我々の日常的な生活世界をコントロールしようとしているシステム世界に対抗して、個人が自立し主体的に生きうる要件であることを主張する。目的合理性に基づく行為は、すべてを目的と手段の関係でとらえ、行為者の行為は自己中心的な成果計算によって支配される。他方対話的合理性に基づく行為は、他者との相互行為が基本となり、お互いが対話を通して共通の状況規定を基盤にして、相互に一致しうるという条件下で各々の目標を追求するのである。自分自身で生きる意味を見いだし、時代を切り開く努力をする上で、本書が展開する現代社会の分析、課題、解答は是非とも参考にせねばならぬものであろう。