遊戯療法 深谷和子先生(東京成徳大学)
<はじめに>
・なぜ子供の場合はプレイセラピーなのか
言語が理解できない、表現できないため
・セラピストという 子供一人にセラピスト一人 個人の遊戯療法が基本
集団遊戯療法もある。
・個人遊戯療法
理論
非指示的自由遊戯療法 この他に 児童分析
自由 使う素材が自由 自由でないもの 箱庭療法、フィンガーペインティング
便秘に効果
かかわりの中で成長支援をしていく。
成長発達の中で軌道を間違えたー修正する必要がある。
戻してやればあとは子供たちは自由に成長していくもの。
人生の早期にそうしたことが起こった子供に支援援助していくのがプレイセラピー。
<設備と用具>
1)プレイルーム
簡単にできる。部屋があって、玩具があって、セラピストがいて、子供がいるというセッティング。
外界から子供を隔て、ワクを作ってあげる。ワク 敵から守ってあげる。
テレビ ー ワクを破って情報が入ってくる。情報はあたかも自分がそこにいるかのようにさせる。
家族というものは安全で、守られるものであったが、今は、甲羅が壊されている状態になっている。不安の時代となっている。
ワクで囲った世界、何をしてもいいルーム。
セラピストは、親以上の親。現代の親―虐待―母親に対する信仰を破壊。
悪意も持たない、評価もしない。
・大きさ 資料P1 広いところー集団、狭いところー個人
関わりを促進する広さ、「セラピスト・・・ならない」P1
中の状態―資料P1
小さい子供は泥遊びが水遊びが好き。ストレス解消ができる。
自然に触れる。
畳やマット 服が汚れないように座れる場所
観察室、遊具倉庫
2)遊具リスト
玩具の電話 緘黙の児童のため
関わりが促進されるような玩具
3)遊具選択の原理
1.子供の興味を引き、これをつなぐ装置
病識 子供は病識のなさが特徴 病識がないから治療意欲もない。
治療理解もない。
玩具のある部屋に行こうねと誘う。
2.自由度の大きさを知らせるメッセージを伝達する装置
ここでは何をしていいんだよと分かるようなものを置くー武器、普段さわっていないもの
3.関係を深める装置
電話
4.感情を解放する装置
フィンガーペインティング、水、太鼓、カスタネット等発散できるもの
5.精神的な活動を促進する装置
積み木 いろいろに遊ぶことができる。
6.フラストレートさせたり活動を抑制させたりしない装置
難しすぎる道具は避ける。陶器のものよりはプラスティック。
<実施の手続き>
1)回数と時間
週一回 30分〜50分 めどは40分 1クール 約20回
子供の状況に応じて、自閉症の場合には何年もという場合もある。
週に2回やったことがあるが、駄目ですね。効果がない。
2)時間の組み立て
<はじめに>
子供はかって出会ったことのない人に出会い、新しい体験をし、新しい自分を発見する。そのために多くの手続きがある
3つの時期 導入期、中間期、終結期
1.導入期―開始後の数回
@ はじめの約束
どのように子供がわかる言葉でいうか。「すきなことしていいのよ」
緊張して動かない。焦る。どうしようと思う。しかしそれも尊重する。
A 時間の約束
針の位置で知らせることもある。終了の5分前に知らせる。
B 外へ出ない
特別の時間の性質が失われる。
C 行動には最大限の許容
したいことは何をさせてもいいし、何を考えようが、言おうが尊重する。
セラピストとの関係を保つため「制限」もある。
D 子供の言葉で語り、子供の目線で行動する。
どうすれば子供に安心感をあたえることができるのか?
物理的な目線、心理的な目線。
E 不安や緊張を受け入れる
始めは不安緊張がある。無理に話させたり、動かせたりしない。
2.中間期 資料P3
そんなに簡単に子供との関係ができるとは思ってはいけない。
導入期が長くなることもある。
行動の制限をすることも生じる。
この時期に何をさせたいか。
1)感情を自由に表出、欲求の一層の行動化
悪い子と言われないために抑制していた行動も試し始める。この期間に子供はかなり悪くなる。
「価値に関わりなく、丸ごと受け入れてもらえる自分」を体験、
自分への信頼と相手への信頼を取り戻す。
好いこと、悪いこと、どちらも全面的に受け入れてあげる。部分的な否定もしない。 → 自尊感情を取り戻す(Self-esteem)
difficult child いつも外の人からきつい目を向けられてきた。それが問題児となっていく。周囲から嫌われ、いなくともいいんじゃないかと感じている。
こういう子供が、相談に来る。プレイセラピーの場にいるということ。
セラピストがそういう人じゃないと思わせることはとても大変なこと。大人より難しい。全身全霊で、そういう大人達とは違うということを分からせるのは大変。
2)「制限」の導入
装置 子供の安全が守られる。
1.制限する行為の種類
@ セラピストへの身体的攻撃
物理的な攻撃 → 他へそらせる
A 備品への攻撃
B 安全と健康の問題
C 社会的に許容できない行為
D ルールを破る行為
E 集団遊戯療法の場合は他のメンバーへ攻撃すること
2.制限の与え方
@ 初期はできるだけ許容し、言葉でなく行為で与える
言葉だと親や先生と一緒になってしまう。いけませんとか、叱られますよとは言ってはいけない。「・・・はしないことになっているのよ」。
A 上下関係ではなく、横の関係で伝達する。
言葉は柔らかに、内容はきちんと伝える。
B フレンドリーに、しかし明快に(必要な時はためらわず)
3)子供の行動の選択的強化と消去
望ましくない行動 サポートしない
建設的な行動 関心をしめし、サポートする
3.終末期
治療の目的は達している。日常生活でも、尊重され、充実感を得られる。わざわざセラピールームへ来ることはない。
1)現実場面とプレイルームの距離を縮める
後片付けー一緒にしようね
2)終る何回か前に、終結の予告
資料P5
<セラピストはどう動くか>
1)アクスライン(プレイセラピーを始めた人)の8つの原理
1.よいラポート
2.あるがままに受け入れる
3.許容的な雰囲気づくり
4.子供の感情を理解、適切な情緒的反応
子供が最大に尊重される。
5.主人公、自信と責任を持たせる。
6.非指示的 そっと支える。
7.変化や成長をゆっくり待つ
子供は成長を急かされている、いい子にな利なさい。先生は子供を引っ張る。
8.制限の導入
ワクをはめて、子供を自由にさせる。
2)セラピストが目ざすもの(8つの原理の言い換え)
1.〜5.
<対象児の選び方>
1.援助全体計画の中での位置付け
2.医学的検査の必要性
弱視の子供 愛想のない子供と思われる。
3.環境調整の必要
4.遊戯療法の種類の吟味
5.セラピストの性別、タイプ
<何が子どもを変えるか>−プレイセラピーの秘密
1.人間関係
@ 今問題があっても、使わなかった能力を発揮して、自分で問題を解決できるようになっていく、それを高めていくのがセラピストの役割。
A 「深く、静かで、持続的な関心」
愛ではない、その裏に憎むということもある。愛そうと思っても愛せない人がいる。関心は持てる → 理解しようとする。
B 新しい自分との出会い、健康な自己肯定
今までこうだと思っていたのが、自分の中に新しい自分を発見して、自分は駄目だと思っていたが、自分への信頼を取り戻す。
2.遊びによるカタルシス効果
3.新しい学習の起こる場
プレイセラピーをした後は必ず記録をとる
資料 P76
<PLAY>
遊び道具の記述と何をしたか
<MEMO>
気付いたこと
<印象>
自分のやり方でメモを作る。セッション中にメモをとることはしない。
付録参考。
感想
乳幼児期、および児童期に獲得することができなかった、基本的信頼、自律、自主性をプレイセラピーを通してどう回復するかというこということなんだなと感じています。その回復にセラピストとして支援する。そこで大切なこと、大事なのは子供の心にどれくらい接近できるか、子供の世界に入っていけるだろうかということ。これはこれまで学習してきた、ロジャーズ的カウンセリングと共通するもの。非指示的なカウンセリングの原理が応用できる領域ではありますが、プレイルームを作るのは大変なことですね。