第1章        精神医学とは、精神病とは

 1.精神医学とは

    人間の精神的側面の異常や病気を解明し、その治療、予防を研究する医学分野。

@        方法論 自然科学的方法 + 心理学的方法

A        異常・病気の判断 疾病の客観的所見が乏しい。

B        患者が病識がなく強制を伴うことがある

C        領域 関連領域が広い。

       

対象年齢:児童精神医学、思春期―、老年―

  対象の場:コンサルテーション・リエゾンー、社会―、司法―、地域―、

       産業―、トランス文化―。

  アプローチ法:生物学的―、力動的―、精神病理学。

  関連・境界領域:心身医学、病跡学、神経学、心理学。

 

 <病因>

   内因 原因不明  統合失調症  脳内物質ドーパミンの過多か?

            躁うつ病       モノアミン

 

       心因   神経症 

 

   外因       脳器質疾患による器質精神病

            

       身体因  脳器質疾患以外の身体疾患による症状精神病

               甲状腺 うつ病   せん妄

アルコールや覚醒剤等による中毒精神病

 

 <治療法>

   身体療法 薬物療法、電気ショック療法―うつ病に効く、持続睡眠療法

   精神療法 支持療法、精神分析、家族療法、集団精神療法、遊戯療法、心理劇、

        森田療法、行動療法、内観療法、作業療法、レク療法、芸術療法

第2章        診断基準、DSM

 1.診断基準について

   客観性の高い共通の診断基準 妥当性と信頼性

   留意点 診断基準は、精神疾患の仕分けに役立つ実用的な「約束事」

       患者に対するレッテル貼りではなく、疾患の治療と予防に貢献するもの

 

 2.DSMについて

   DSM(diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)

    アメリカ精神医学会刊行の診断と統計のマニュアル

    DSM-I  (1952)  単なる精神障害の説明書

        DSM-II  (1968)      〃

        DSM-III  (1980) 内容が大きく変更され日本にも多大な影響を与える。

    DSM-III-R(1987)

 

   DSM-III  DSM-III-Rの特徴

   ・診断基準の明確化

   ・新しい内容

     19の大分類 @~Pが第1軸、Q~Rが第2軸

   ・多軸評価

     5軸の診断により、患者のプロフィールを立体的に見る

 

第4章 神経症(その一)  

神経症 主として心因性に起きる     心身の機能障害

    心因以外にも素質や性格も関与   形態的変化のある器質障害ではない

                     可逆性の病態

                                                       心因

                                                                                                         発症−

                                                                                                        

素質・性格

 

                                                                      防衛機制                   発症+

 

2.発生の原因

  個体側の要因―素質・性格

@    わがままで未熟な性格

A    欲求不満の耐性の低い性格

B    要求水準の高い性格

 

 環境側の要因―ストレス状況

@    家庭 夫婦、親子、同朋、嫁―姑、

A    学校 自分の能力、容貌に関する劣等感、受験勉強、友人関係、クラブ活動

B    職場 対人関係、仕事の内容、配置転換、転勤等

 

 社会文化的条件

  未発達な地域  ヒステリー

  発達した地域  心気神経症(身体のことをクヨクヨ気にする)

  日本 恥の文化、他人への配慮  恐怖神経症の中の対人恐怖

 

3.防衛機制

   不安が生じると、人間にはそれを防衛しようとする心理的メカニズム(防衛機制)

働く。防衛機制のあり方で神経症のタイプが異なる。

@    抑圧 不安や葛藤を無意識のうちに抑え、嫌なことを忘却しようとする。

    抑圧は指摘されても本人は気がつかない。禁圧は気が付く(あ、そうか体験)

A    否認 嫌なことを認めない、見まいとする。否認から抑圧、禁圧へ移行。

    ヒステリー患者によく見られる。

B    補償 劣等感を補う。どもりが努力して弁舌家になる。

C    置換 問題となる対象を別の対象に置き換える。

    恐怖症で見られやすい。

D    分離 感情を切り離して、感情を述べない。

    強迫神経症に見られやすい。

E    取り入れと同一化 他人のものを取り入れて、自分のものとする。

          「攻撃者への同一化」が有名

F    投影 自分のうちにあることを相手に投影し、相手が持っているかのように考え

    る。

    被害妄想 自分が相手を憎んでいるのに、相手が自分を憎んでいるように感じる

    恋愛妄想 相手が自分に恋愛感情を抱いているように感じる。

G    反動形成 自分が考えているのとは反対の態度にでる。

      強迫神経症でみられる

H    逃避 嫌なことがらから逃げてしまう。学校からの逃避、疾病への逃避、空想へ

    の逃避。

    未熟でヒステリー傾向の強い人に見られる。

I    転換 抑圧し、転換して、身体症状として訴える。

    ヒステリーの転換症状が有名。

J    退行 子供がえり。周囲からの同情、協力がもらえる。

K    分裂 相手を良い面と悪い面に分裂して把握し、その一方しか見ない。

    すべて良いか(理想化)、すべて悪いか(脱価値化、軽蔑)

    境界パーソナリティ障害の人や幼い子供に見られる。

L    知性化 悩みや葛藤を知性的なものに置き換える。失恋の痛手を勉学に励む。

M    昇華 社会的に認められる方向で、葛藤を発散する。 芸術、スポーツ、学問。

 

4.精神病との鑑別 

  

 うつ病 妄想 一次 了解不能

        二次 了解可能

第5章 神経症(その二)

 1.類型について

   <不安神経症> 対象がない恐れ         恐怖神経症は対象がある。

    急性と慢性

                    急性 不安発作 パニック障害とも言われる。

心臓神経症 激しい動悸、心臓が苦しくなり死ぬような恐怖

                                   過喚起症候群 呼吸が苦しくなり、手足のしびれ、失神

        治りやすいが、「予期不安」に悩む。

 

   症状

    精神症状 恐れ、緊張、心配、恐怖、不穏、焦燥、苦悶、興奮

    身体症状 手指振戦、発汗、頻脈、心悸亢進、嘔気、嘔吐、下痢、尿意、

         呼吸困難、胸内苦悶

 

   不安のかげに、要求水準の高い欲求が潜んでいる。

 

   治療 抗不安薬 ベンゾジアゼピン系 抗不安作用

                     催眠作用

                     筋弛緩作用

                     抗けいれん作用

      パニック セロトニン

      抗うつ薬 SSRI パキシル

 

  <ヒステリー> 派手な症状を呈する                  ヒスとは子宮の意味

   ヒステリー神経症、ヒステリー性格、ヒステリー症状の3つを指す場合がある。

 

    ヒステリー性格

@    未熟性(幼稚っぽい)

A    感情易変性(感情が変わりやすい)

B    自己顕示性(目立ちたがり屋)

                ヒステリー症状

@    転換型 葛藤が抑圧され身体症状に転換

      身体症状

       運動症状 失立、失歩、失声、失神、けいれん発作

       知覚症状 手袋型や靴下型の知覚障害、視覚障害

A    解離型 意識面、   もうろう状態、遁走(蒸発)

記憶面、   全生活史健忘

自我同一性  二重人格

の面に現れる。

 

     特徴

      疾病利得

      疾病への逃避

      満ち足りた無関心(症状に無関心、失神しているのに無関心)

      症状の訴え方がオーバーであり、わざとらしく、他人が見ていないと症状が

消失することもある。

 

<強迫神経症>

  バカバカしい、不合理であるとわかっていても止めることが出来ない症状を強迫症状という。強迫症状が前面に立つ神経症。

 

 強迫観念と強迫行為に大別

  強迫観念 バカバカしいとわかっていてもある考えが浮かんできて困る。

  強迫行為        〃        行為を繰り返さざるをえない。

       洗浄強迫、確認強迫、就眠強迫等

 

 自己完結型と他者巻き込み型(女性に多くより重症)

 

 強迫性格 良心的、几帳面、杓子定規、融通性・柔軟性の欠如、瑣事のこだわり、ケチ、

      自信欠乏、完全癖の強い性格。自己不確実性性格ともいえる。

<恐怖神経症>

  対象が明らかな恐れ。

  恐怖の対象の種類によって命名。 対人恐怖、高所恐怖、乗物恐怖、尖端恐怖、

                  疾病恐怖、学校恐怖、出社恐怖等。

  対象に対する強迫神経症とも言える。

 

<抑うつ神経症>

  元気のない抑うつ状態。何となくグズグズしているタイプ。

神経性うつ病と同義に用いられるがうつ病ではない。

  抑うつ性の性格障害に近い。

他罪的。神経症レベルでのうつー心気症。 うつ病は自責的、日内変動がある。

 

<心気神経症>

  身体のことをクヨクヨ気にする。

  身体的愁訴 頭重、頭痛、めまい、眼精疲労、食欲不振、胸部圧迫感etc.

  ドクターショッピング あの病院大丈夫かしら? 

うつ病の心気妄想は、断定的で納得できない

 

<神経衰弱>

  心身の不調にこだわる。易疲労性、注意集中困難、記銘力障害、不眠等を気にする。

  受験ノイローゼの学生

  神経衰弱状態と状態名で用いられる。

 

<離人神経症>

  生き生きとした実感が感じられない。         分裂病にもある。離人感。

・自分の精神状態に対して(喜怒哀楽)

・   身体

・外界に対して

  ピーンとこない感じ、ベールに包まれているような感じ。

  「実感がないという感じを強く実感している状態」で苦痛感が強い。

2.治療と予後              

  <治療>

・環境調整  家族、学校、職場の問題を調整。

           家族療法

  

・精神療法  支持的

                精神分析療法

           行動療法 強迫神経症によい

・薬物療法

                                           パニック障害 抗うつ薬 三環系  SSRI パキシル

                                           強迫性障害  抗うつ薬 SSRI デプロメール、ルボックス

 

  依存性、習慣性について

   ベンゾジアゼピン系 問題はない。むしろアルコールの方が強い。

 

第6章 統合失調症(その一)

1.統合失調症とは

  主として青年期に発症し、しばしば幻覚や妄想を呈し、あとに人格の欠損を残す。

  躁うつ病は人格の欠損を残さない。

 

 <研究の歴史>

   ドイツのクレペリン(1856~1926)「早発性痴呆症」

   スイスのブロイラー(1857~1939)「統合失調症」(シツォフレニー) 

シツォ 分裂 フレニー 精神

 

 発生頻度 0.8% 100人中1人 発生頻度は高い。

 男女の差はない。青年の病―10代後半から20代後半。40歳以上はまれ。

 うつ病は女性に多い。

 

2.基本症状

  ブロイラーの4A

  Autism(自閉症)自分の内面的世界へ閉じこもり、外の現実世界からは遊離。

          固い、タバコをじっと3時間座って吸っている。

  Ambivalence(両価性)同一対象に対して全く相反する感情、意志、思考を向ける。

             愛情と攻撃性が同時に存在

  Affectの障害(感情の障害)感情の鈍磨、不安定性、無関心。

  Associationの障害(観念連合の障害)思考内容のまとまりの悪さ、連想弛緩がみられ、ひどくなると話の内容が支離滅裂となる。

 

3.副次症状(ブロイラー)・一級症状(シュナイダー)

  認められれば、分裂病と呼んでよい症状。

  @~Bが幻聴、C〜Eが作為体験(させられ、あやつられ体験)

@    考想化声 自分の考えていることが幻聴となって聞こえてくる。

A    自分の行為を批評する幻聴

B    問答形式の幻聴 自分の噂をし合っている二人以上の声が聞こえてくる幻聴

C    身体への影響体験 身体に電波がかけられるなど外からの影響を感じる。

D    考想奪取 自分の考えが抜き取られる。

E    その他の作為体験

F    妄想知覚 知覚したものに患者が妄想的意味を与える。

G    考想伝播 自分の考えたことが他人に伝わっている。

 

  妄想知覚

  妄想着想 「自分は天皇陛下の隠し子である」というような妄想を突然思いつく。

  妄想気分 世の中不気味なことが起きるのではないか。

 

4.その他の症状の分け方

  陰性症状               陽性症状

  障害された機能喪失による症状     そのため、下部に抑制されていた機能が

                     出現して出てくる症状

 

  無為、自閉、無気力、感情鈍麻、    幻覚、妄想、させられ体験

  無関心、自発性減退          (派手な症状)

  (地味な症状)

 

  慢性期                急性期

 

  基本症状(ブロイラー)        副次症状(ブロイラー)

                     一級症状(シュナイダー)

 

  向精神薬に反応しにくい        向精神薬に反応しやすい

 

第7章        統合失調症(その二)

 1.病型について

   <単純型分裂病>

    幻覚や妄想等の陽性症状は目立たない。自閉、情意鈍麻、人格障害等の陰性症状

がゆっくり進行する。

   <破瓜型分裂病>

    破瓜とは爪の字を縦に二分すると八の字が二つできることから、女子の16歳(初潮の起きる時期)の別称で思春期を意味する。

    思春期から20歳前後に発病しやすい。妄想型は30歳前後。

    DSMでは、解体型。

    妄想、幻覚もあるが、妄想型のように体系化されることはない。

    不眠、頭重、易疲労感、注意集中困難、抑うつ気分ではじまり、

    独語、空笑、奇妙な行動、げんき的態度、退行的で児戯的な仕草。

  <緊張型分裂病>

   急性に興奮し衝動的になったり、逆に無言・無動になったり(昏迷)する。興奮と

昏迷を繰り返す。

   20歳前後。

  <妄想型分裂病>

   頑固な妄想症状。被害妄想、誇大妄想もあり、体系化しやすい。

   30歳前後、時には40歳代。

   感情障害や自閉症は目立たず、人格の崩壊に至ることも少なく、ラポールもよい。

  <鑑別不能型分裂病>

   上記の4型のいずれともいいにくい。

   最近では統合失調症の軽症化が言われており、現在ではこのタイプが増加しつつある。

  <残遺型分裂病>

   欠陥型、欠陥治癒型ともいわれる。

   過去に明らかな精神病性の時期があったが、現在は見られないもの。

   軽症ならば社会生活は十分可能。

 

2.病因について

  原因はいまだ不明。

  発症の成り立ち

  ・ 生物学的

     遺伝負因

      一卵性双生児に研究 一致率は70〜80%。二卵性は20%。

      統合失調症へのなりやすや(脆弱性)が遺伝するのではないか。

 

     身体的原因  ドーパミン過剰仮説。

 

  ・ 心理的

                    心因  親からの自立の失敗、失恋、進学や職業上の挫折、宗教上の体験

  

   性格因 分裂気質。非社交性、内気、引きこもり、無口、控えめ、生真面目、

       敏感、神経質、従順、鈍感。

       自閉症とともに、敏感性と鈍感性という相矛盾した傾向が同居。

  ・ 社会的

                    家族因 家族成員に問題がありそのしわ寄せが弱い患者に及ぶ。

         統合失調症をつくる母親 過保護、干渉的、支配的、共感性に乏しい

         両親同士の関係や歪み。

     社会因 大都市中心部の社会・経済的な低階層。

         社会の人の患者に対する阻害的態度。

 

3.治療について

  治療の目的                            治療法

  1)症状の消失、              抗精神病薬

                     クロロプロマジン

                     ハロペリドール

                     陽性症状に効果あり

                     非定型

                      リスパダール

                      ジプレキサ

 

2)現実検討力(病識)の改善、     精神療法

                    支持的、受容。

                    森田療法、自由連想は不可。

 

3)社会適応力の回復          リハビリテーション(社会復帰)療法

 

4.経過について

  荒廃      症状も病識も社会適応力も改善されず、精神病院に入院し続く。

 

  不完全寛解   症状は消失、病識は不完全、一応の家庭生活、社会生活は営める。

 

  完全寛解    

 

第8章 うつ病(その一)

 1.症状について

   感情の病 ある期間(平均3ヶ月)は続くが必ず元通りに治る病気。

   主として中年から初老期にかけて挫折を体験して陥る病態。

   <精神症状>

    不全感、無気力、意欲減退、抑うつ感、めいる、イライラ感、焦燥感

    精神運動抑制、読んでも頭から抜ける、新聞を読む気がしない

    自殺念慮、罪悪感、自責感、

    妄想観念および妄想 心気妄想 きっと悪い病気

              貧困妄想 入院したら経済的に困る破産したらどうしよう。

              罪業妄想 自責的で罪の報い

   <身体症状>

    易疲労性、頭重、肩こり、不眠(早朝覚醒が多い)、食欲不振、体重減少、

    性欲減退、胸部圧迫感、口渇、便秘

    日内変動―朝調子が悪い。

 

 2.なりやすい性格

   メランコリー親和型

   几帳面、生真面目、律儀、正直、小心、仕事好き、手を抜けない、入念な仕事振り、

   人に任せられない、完全主義、強い責任感、道徳感、融通性や柔軟性がない、頑固、

   人と争えない、人と折り合いが悪いとき自分が折れる、人に頼まれるといやとは言えない、人の目を気にする。

   几帳面で生真面目で秩序に縛られた性格、他人の評価を気にし、あまり自己主張しない「古き良き日本人」

 

 3.なりやすい状況

   「生活上の変化」がみられる時

     身体病の罹患・負傷・手術、就職・転勤・転職・昇進・退職、出産・更年期・子供の結婚、結婚・お見合い・愛情関係のもつれ、配偶者の死・親しい人との離別、留学、引越し・新築・負担の急激な増加・軽減。

   喪失体験の時だけでなく、獲得体験(昇進、新築)でもなりうる。

   秩序の変化、新たな負担の増加。

   「負荷状況」「荷おろし的状況」

 

  几帳面で真面目な人間が、生活上の変化に直面して努力しつつ心身のエネルギーを使

い果たして、ついにうつ病を発症する。

 

4.うつ病者への精神療法

第9章 うつ病(その二)

 1.分類について

@        内因性うつ病と反応性(心因性)うつ病

実際には内因性と反応性の両方が関与している場合も少なくない。

A        神経症性うつ病と精神病性うつ病

精神病性とは、現実の検討力の障害、病識がない、妄想がある。

B        単極性うつ病と双極性うつ病

         躁病とうつ病の双方がある。

C        軽症うつ病と重症うつ病

外来治療で治療可能。

   D 一次性うつ病と二次性うつ病

                    一次性―原因不明(内因性)

二次性―何か原因があって二次的に起きるもの。身体疾患、薬剤等

 

2.仮面うつ病

   身体症状が前景に目立つうつ病。

 

3.うつ病に関する動向

   1)増加傾向

     都市部。理由として、価値観の多様化 伝統志向的な真面目人間が行きにくい。

     核家族化、団地化により家庭内や地域内のサポートシステムの低下。

     うつ病知識の普及。

     男性 10% 1年間 2〜3%

     女性 20%     4〜6%

   

2)軽症化  

早期受診、早期発見、抗うつ薬の投与等。

   

3)遷延化

     経過がダラダラと遷延化。抗うつ薬の使用、治療への依存、うつ病の神経症化。

   4)身体化  

仮面うつ病の増加。

 

   5)新薬の登場 

三環系抗うつ薬

SSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibiter) パキシル、デプロメール

          SNRI(Serotonin Noradvenalin Reuptake Inhibiter) トレドミン

 

   6)発病状況の検討

     なぜ、どのようにして発症したのかの状況分析が、精緻に行われる。

 

 4.薬物療法

   抗うつ薬 

以前は、

@    副作用、

抗コリン系 口渇、便秘、視力調節障害、眼圧亢進、排尿困難、心悸亢進

中枢神経系 めまい、眠気、けいれん発作

A    効果発現が遅い、

B 副作用のほうが早く現れる問題点。

 

   副作用を少なくし、効果発現を早めることを目指して開発。

 

第21章 老年性の痴呆(その一)

1.老年精神障害の現状

   痴呆に向かうものかそうでないか。

   老人性痴呆 65歳以上 4〜5% 加齢とともに高くなり、女性に多くなる。

         85歳以上 25%

2.老年期の痴呆

  痴呆とは、一度獲得された知能が、後天的な脳の器質障害の結果、欠損をきたす。

 1)脳血管障害性痴呆

   血管が閉塞し(多発性に脳梗塞を起こし)、痴呆になる(まだら痴呆)。

   初期症状 頭痛、めまい、手足のしびれ感。

   脳卒中発作を起こすたびに、片麻痺、言語障害を起こし段階的に進む。

   感情失禁、高血圧の既往、夜間せん妄。

   日本人、男性に多い。2分の1。

 2)アルツハイマー型老年痴呆 

    脳の神経細胞の萎縮。原因不明。徐々に進行。全般的で高度になりやすい。

    欧米人、女性に多い。3分の1

  1)2)をあわせると90%。 混合型もある。

  3)その他 ヒック病 万引き、むさぼり食い、ゴミを他人の家の前に捨てる。

 

        アルツ              脳血管

発病年齢    70歳前後より多い        50歳以後

性別      女性に多い            男性に多い

人格      早期より崩れる          比較的よく保たれている

感情      多幸性、上機嫌          易変性、感情失禁

痴呆      全般性              まだら

神経症状    少ない              あり

眼底動脈硬化  なし               見られることが多い

身体的愁訴   なし               あり

経過      徐々               段階的

病識      早期から失う           比較的保たれる

 3.痴呆の診断

   身体的検索、神経学的診察。

   仮性痴呆と真性痴呆を見分ける。

   5D’s

    Demenz(Dementia)             痴呆

    Depression(Depression)         うつ

    Delirium(Delirium)             せん妄

    DurchgangssyndromTransient Syndrome  一過性

       Defektschizophrenie(Residual Type of Schizophrenia) 分裂

 

 痴呆の状態や程度を知るスケール

  国立精研テスト 痴呆のスクリーニング

改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R) 痴呆の程度

 

第22章 老年期の痴呆(その二)

 1.痴呆の治療

   治療可能なもの 原因療法

   

・中核症状 知能、記銘力の低下  治療法なし

   ・随伴症状(周辺症状) 治療可能

     精神症状 不眠、抑うつ、せん妄

     問題行動 徘徊、行方不明、盗害妄想・幻視・人物誤認による異常行動、易怒、

          暴力行為、弄便などの不潔行為、異食等。

     感情は保たれる、感情反応は通常。

   なぜこのような症状が現れているのか、過去の生活史に留意。

 

   健忘(生理的な物忘れ)    痴呆(病的)    せん妄(うつ病)

    加齢に従って徐々に。    年単位       急激

    日常生活に支障を      エピソード記憶

きたさない         が無くなる

              月日曜日

 

2.痴呆の予防

  脳血管障害性痴呆

   動脈硬化、高血圧、心疾患の予防 

食塩、脂肪分の摂取を控える。肥満に注意。適度な運動。ストレスの予防。

 

  アルツハイマー型

   心身の一般的な健康

 

3.老人施設の種類

  外来で、家族では在宅ケアに困難が認められると、医療的な社会資源(相談機関、施設、病院)を紹介。

 1)居住地の市役所 (老人)福祉課

    在宅サービス ホームヘルパー、看護師の訪問看護

    入浴サービス

    ショートステイ・ミドルステイ

    デイケア

    リハビリテーション

  2)痴呆と身体疾患のある場合 老人病院に入院(大学病院・総合病院を通して)

  3)各種老人ホームの紹介