グループワークリーダーのあり方

エンカウンター・グループの目的

「エンカウンター・グループとは、自己理解、他者理解、自己と他者との深くて親密な関係の体験を目的として、1〜2名のファシリテーターと10名前後のメンバーが集まり、集中的な時間のなかで、全員でファシリテーションシップを共有して、<今、ここ>でやりたいこと・できることを自発的・創造的にしながら相互作用を行ないつつ、安全・信頼の雰囲気を形成し、お互いに心を開いて卒直に語り合う場である」

特徴

@ 目的は「成長」であるー「訓練」を目的とするTグループ、「治療」を目的とする集団精神療法とは異なる。

 

A ファシリテーターシップはファシリテーターに固定せず、全員が共有するシェェアード・ファシリテーターシップと言うこともある。

ちなみに、Tグループの「トレーナー」、集団精神療法の「セラピスト」あるいは「リーダー」は、基本的には一貫してリーダーシップをとり続ける人である。また、Tグループの「トレーナー」、集団精神療法の「セラピスト」あるいは「リーダー」とそのグループヘの参加者の関係は、ー貫して「援助者」と「被援助者」といったー種の上下関係である。

 

B 自発的・創造的なプロセス志向であるーあらかじめ準備されたプ□グラムやテーマやシナリオはー切なく、ファシリテー夕ーとメンバーで模索しつつ展開していく。

 

C 相互作用が行なわれるーファシリtテーターとメンバー、メンバーとメンバーの間で互いに作用しあう。

 

D 安全・信頼の雰囲気を大切にするー強制したり、無理をさせたり、脅威を与えたりする雰囲気ではない。

 

E 自分自身および他者にオープンになるー自己欺まん的、自己防衛的ではなくなり、正直、卒直、素直になる。

 

F 集中的に時間をとるー普通は数日間合宿をする。

 

G小グループであるー中グループ、大グループとは異なる。

ファシリテ−ションのねらい

@ グループの安全・信頼の雰囲気形成―グループの雰囲気はエンカウンターグループの土台(土俵・容器のようなもの)であり、これを居心地のよいものにすることは非常に大切である。

A 相互作用活性化―相互作用が活発に行なわれ、相互のコミュニケーションが正確になされることは、自己理解、他者理解、関係づくりには欠かせないことである。

B ファシリテーションシップの共有化―ファシリテーターがー貫してファシリテーションシップ(個人、相互作用、グループに促進的・援助的に働きかけること)をとり続けるよりは、折々に各メンバーがファシリテーションシップを発揮する方がグループにとっても個人にとってもより有益である。

C 個人の自己理解の援助―エンカウンター・グループの目的の1つは自己理解であるので、それに向けていろいろ働きかけることが必要である。

D グループからの脱落・心理的損傷の防止―グループの進展にともない・脱落しそうな人、心理的損傷を受けそうな人が出てくることがあるが、それを防止する必要がある。

 

ファシリテーターの立場・視点・機能

 立場:他者を援助する立場 他者から援助される立場

 

 視点:個人の状態を把握しようとする視点

    グループの状況を把握しようとする視点

 

 機能:サポート

    活性化

グループ・プロセスの発展段階

時期         発展段階仮説                                普通の相当セッション

導入段階       段階I 当惑・模索                              第1セッションから

                 段階II グループの目的・同一性の模索       5セッション頃まで

                      段階III 否定的感情の表明 

展開段階      段階IV 相互信頼の発展                    最終セッションの前の

                    
         
段階V  親密度の確立                         セッションまで

       段階VI


                      段階VII 深い相互関係と自己直面 
     

                   

終結段階     終結段階                                         最終セッション

                      段階IV以上に展開したグループ
          

段階IVまで展開しなかったグループ  

 

導入段階の特徴

この段階は混沌とした状態であり、ファシリテーターにとってもメンバーにとっても、居心地が悪く、いろいろと試行錯誤をする時期である。そして試行錯誤しながら徐々にウォーミングアップが行なわれ、安全感が次第に増してくる。別の言葉で言えば、展開段階のための土俵づくりが行なわれることになる。この導入段階をどのように経過していくかということは、その後のグループ展開を大きく左右する。この時期をうまく経過できれば、次の展開段階に入っていけるのであるが、ここでつまづくと、最後までグループはモタモタし、展開段階に入れぬままに終わることにもなりかねない。それだけに、ある意味ではこの段階がー番難しいとも言える。

 

展開段階の特徴

導入段階を経ると、いよいよ展開段階である。普通は最終セッションの前のセッションまでが展開段階に相当することが多い。なお、セッション数の多少によりどの程度まで展開するかは違ってくるのであるが、順調にグループが展開しても、最低限のー通りの展開(「段階V11深い相互関係と自己直面」への到達)が生じるには、展開段階に入ってから少なくとも3セッションは必要であるように思われる。

この段階は、グループとしてのまとまりができ、安全感や信頼感、親密感が高まり、11人にスポットライト(焦点)があてられ、率直な自己表明や関わりあいが起こり、いわゆる盛り上がった状態になる。

終わりの時が近づくにつれ、グループは終結段階となる。この段階は、◎段階1V以上に展開したグループではそれなりの満足感があり、心地よい雰囲気のなかで終わりを迎える。そこまで展開しなかったグループでは不満足感が強く、なんとかそれなりのおさまりをつける努力が行なわれる。この終結段階をどのように過ごすかということは、導入段階に次いでなかなか難かしい。特に段階1Vまで展開していない場合はなおさらである。