カウンセリング概論II

                       

1、カウンセリングとは何か

1) 日常用語 対 カウンセリング心理学用語

面談、個別相談、助言

中には、心理学的援助過程としてのカウンセリング(自己理解と自己調整への援助)に近い意味も含まれている。

2) カウンセリング心理学の歴史から

ガイダンス運動(職業、進路)と心理測定運動(個性理解) 個性を活かす道

精神衛生運動(不況と心理的問題の増大) 臨床カウンセリング、適応援助

復員兵の社会復帰支援 大学にカウンセリングセンター設置

C.Rogers(非指示的、クライエント中心カウンセリング)の影響 関係重視

 

3)カウンセリングの定義

「何らかの個人的問題で援助を求める人(Cl)が、専門的訓練を積んだ人(Co)との主に言葉による相互作用を通して、自己理解を深め、人生において遭遇する困難を克服して、個性を生きることができるようになる、援助の関係、行為、過程」(福島)

 

2、カウンセリングの基本構造

1)     クライエント

 ○クライエントはどういう人か

クライエントは事柄・他人・自分とのかかわりに不安,心配,葛藤,こだわりを持ち,その解決に動機づけられている人  

人は誰もクライエント

2)     カウンセラー 復元力が大事 相手の気持に近づく、特に言葉の出所

 ○カウンセラーの役割

クライエントの自己開示を助け、

       ストーリーを話すのを助ける。その中には、願い、ものの見方、感情等が含まれる。事実ではない。その人の世界。

       変身の術を使う 疑い、批判、お小言無し。

共感し、

理解を伝え、 あなたの話をこう聴きましたよ、気持をこう聴きましたよ

       Cl 自己開示    Co 鏡に映す

         自己対面

                   反射が大事(投射ではない)

                   明るく、肯定的な目

                   共感力 復元力

<反射(反映)、言い換え、明確化の表現演習>

「いま、あなたが言ったことは  ですか(ですね)

「いろいろ心配して,不安になっているのですね(C1もうどうなってしまうのかと)

「あなたの気持ちがこんなふうに伝わってきました、どうでしょうか」

「いろいろおっしやったことを一言でいうと、どういう言葉になるでしょうか?」、など

 

鏡に映った自分に向き合う

 

ミス 自分を映す 投射をしがち(自分の内にあるものを相手にぶつける)

 


   気づく

復元力こそ心の健康さ

 

注意すること 鸚鵡返し ぶっ殺す→怒りたい気持、悔しいんだな

            天井の張りにロープをつるして→辛いんだね

気持を言葉に聴く練習をする

復元力のあるカウンセラー 柔らかい言葉になるという

 

 

3) 関係と場の制約 身代わり、相棒になることではない。場は基本的に一対一

       日常生活から離れた場 CoClと結婚することは出来ない

       ワイフ(家族)のCoは出来ない。担任と生徒は避けた方がいい

       個人的な贈り物は受けない

4)空間的構造 面接室という日常とは異なる空間を作る、電話なし

 

5) 時間的構造 50分が限度 一定の期間を置いて

        例外としてマラソンセラピー

6) 契約    守秘義務 

私はあなたの気持をしっかりと受け止めて私の気持を伝えます

      あなたは自分の経験を話して自分で解決する。私はその手伝いをする

 (2)カウンセラーの役割 受容と促進

1) まず関係づくりの基本的態度

あなたが主役、私は脇役(自分で解決できる、その過程を同伴し、手助け)

あなたを受け入れる(どういう姿も掛け替えないあなたの一部、関心)

あなたを理解したい(だから質問もする、話してほしい)

 

   「あなたが自分のことを話して、自分の気持を見直したり整理して、自分らしい解決ができるように私はお手伝いをしたと思います。」

   「貴方の気持が私の心にどう映ったかを率直に伝えるように努力します」

 

2) 内側から理解し、一体となる努力の過程

3) 湧き上がる疑問を率直に伝えようとする過程(カウンセラーの自己一致)

4) クライエントの個性と人生を鳥瞰しつつ、クライエントの自己直面化を支援する

5) 目標一試み一自己評価の過程を支援する

6)クライエントの自立を助ける

 

クライエントの問題に触れ、率直に自己開示し、クライエントの行動調整を支援し、離れる。(それに導かれてクライエントは自己対面と自己直面に取り組み、自己目標を定め、行動を起す)

 

 ○カウンセリングの目標

こだわりから自由になって,自分らしい自分をとりもどすようになること

 あるがままの自分を受け入れ(周囲を受け入れ)、積極的・主体的に生きること

カウンセリングはクライエントの自律と自立を助けること

 

3、カウンセリングの鍵概念

1) 共感(Empathic Understanding

as if (その人の目になって、その人の感じ方、感情、思考を感じ取る)

あたかも何々かのごとくに

同情すると相手は弱くなる

2) 無条件的敬愛 (Unconditiona1Positive Regard)

好意、敬愛、尊敬、非所有的愛を向け続けられること

  単純受容 ああそうなの

  相手が何を言ってもしてもその心の動きをたいせつにできる

  所有でない愛

 人間誰しも今よりも愛されたい、大切にし、されたいと思っている、かつ自分でもそう思いたいー基本的欲求とロジャーズは言う。

 

3) 一致(Congruence)あるいは純粋性(Genuineness)

素直に感じ、かつ表現を試みる(恐がっている自分、辛くなっている私)

 

 Coなぜこの3つを大事にするかといえば、人は誰しも共感しあいながら生きている、自分のことを好きになりたく生きている、人は誰も嘘は嫌。

 

4、カウンセリングの過程

(1) クライエントはどうなっていくか

1)     話せた、わかってもらえそう、すっとした

一回目の面接はこれでうまくいく

 

2)     振り返り、他人事、恨み辛み、わかってほしい、これまでの枠への執着

         うちの親父は、おふくろは・・・

3) 自分に向き合う、苦しい、自分にやさしく(厳しく)なる(自己定位)

       反映、反射

   ここが鍵

4) 新しい見方、考え、そして感情の発見、希望が沸く(自己理解と自己受容)

   

5) 自主的、自律的、社会的存在への成長(自己成長)

 

(2)カウンセラーの役割受容と促進

1) まず関係づくりの基本的顛度

あなたが主役、私は脇役(自分で解決できる、その過程を同伴し、手助け)

あなたを受け入れる(どういう姿も掛け替えないあなたの一部、関心)

あなたを理解したい(だから質問もする、話してほしい)

 

2) 内側から理解し、一体となる努力の過程

 

Coは1と2をとことん大事にする。

 

3) 湧き上がる疑問を率直に伝えようとする過程(カウンセラーの自己一致)

    なぜならこれをしまっておくとCoは自己一致ではなくなる。

  ためらいながら疑問を伝えていく。

 この段階でClが自分を見直すといい。しかしそれが出来ないとよそよそしくなる。もう来なくなるか、自分に嘘をつき始める。

 

4)クライエントの個性と人生を鳥瞰しつつ、クライエントの自己直面化を支援する 時には対決する。

3と4が山場となる。

 

 対決 矛盾を突く Cl 矛盾にふれる、どういうことですかとたずねる。

            前回と今回は違うよね、どうしてなの?

 自己開示 あなたの話を聴いてきてこういう気持が溜まっています

 

ここまできたら、これまでの流れはいいと思っていい。

世界が変わってくる。

 

5) 目標一試み一自己評価の過程を支援する

   こうして見ようかしら、行動をおこし始める。

   

6) クライエントの自立を助ける

 

(3)クライエントとカウンセラーのかかわりの段階

クライエントの活動               カウンセラーの活動

@心を開く                     @コミュニケーションを開く

A自分に目を向け経験を探る          A話し、自己を探ることを助ける

B自分のいろいろな面を把握する             B個性と問題を把握する

C自分の心を新しい視点から理解する       C自己直面化を導き、支える

D目標を検討し、方法を工夫する                 D自己調整過程を援助する

E振りかえって自己理解を確かめる           E振り返りと終結を援助する

 

こんな風にきっちり終わるのは難しい。Bあたりで滞りがち。

それを乗り越えるには、大切に聴いて、温かい眼で一緒に歩けたかによる

 

5、カウンセリングの技法演習

(1) 基本的共感とプローブ(probes,触れる、探る、確かめる)

<反射(反映)、言い換え、明確化の表現演習>

「いま、あなたが言ったことは  ですか(ですね)

       気持は

事例1

 夫は任せたとしか言わない、義妹はこの頃寄りつかない・・・

Co あなたの苦労分かって欲しいんだね、周りの人に手伝って貰いたい気持なのかなー

 

「いろいろ心配して,不安になっているのですね(C1もうどうなってしまうのかと)

「あなたの気持ちがこんなふうに伝わってきました、どうでしょうか」

「いろいろおっしやったことを一言でいうと、どういう言葉になるでしょうか?」、など

 

<要約>

 Clに要約させる

「ここまでのお話をまとめると、どういうふうになりますか?

Coが要約する

「ここまでのお話は、こういうことでしょうか、ええと   」、など

この場合はClに確かめる。

 

<共感カウンセラーの率直な質問>

「そんなようすでは家庭の雰囲気はどうなのでしょうか?

「そのときのあなたの気持ちはどういうものでしたか?

「いま、話しをしていて、どんな気持ちが沸いていますか?

 

(2) 抵抗、   回避、         防衛への対応

   ためらい なるべく触れたくない  護りたい

 

1) 「わたしのことではなく、子どもの問題で相談している」

コンサルテーションかカウンセリングか

                   子供の事で何とかしたいと思っているんでしょう

 

2) 「父親が無関心で母親が過保護だったから、こうなった」 引きこもり

ああ、そうかー

依存と攻撃の背後にある心の動きへの注目

   まだ逃げていたい気持をわかること

3) 「担任の先生を許せない、訴えて、辞めさせたい」

社会的行動の基礎にある個人的経験への定位

 

4) 「何もかも私がダメだから」

自己非難、自罰的言動の理解

5)カウンセラーの体験や利害と重なるとき

)カウンセラーの価値観と反するとき

 

(3) 自己直面化

1) 人はどうして自己直面化しないのか

○ごまかしを教えられた

   悲しい時へへへと笑って誤魔化す

○率直な自己表現の仕方を知らない

    率直に表現する事を教えられいない

○苦しいから避ける

  ○抽象化や一般化による自分へのいいくるめ  

   頭のいいClがよくやる

 

2) 自己直面化を導くいろいろな手立て

○温かい,安心できる関係  待ってみる

○深い共感に導かれて  

○外圧緩和による自発へ

○何かに触発されて(事件,モデル,読書など)

  週刊誌に報じられた事件 少年の気持がわかる

  その気持もう少し話してくれる

○あいまいな多義的陳述への応答

  貴方のいう事はこんな風に聞こえた こんな意味でもあり、こんな意味でもあると曖昧なところをついていく

○否定的表現に注目して

  典型 自分の事を語る時しか出来ない 僕は夜しか散歩に出られない

  否定的表現の後にそうでないものがある

○矛盾を指摘されて

  ○深い自己探索から  

   人間の心の深い洞察がある、

 

  参考までに

過去の出来事・心理状態の再体験

   最初に出会ったときの貴方の気持を聞かせてくれないかなあ

未来の暗黙の想定の見なおし

       大概の人はこのままずっと続くと思っている。それを見直す。

 3) 事後の気配り

 

(4) 自己調整の支援

[ 自己目標   試み   自己評価 ] への支援

○あなたの決心を言ってみてください

○遠い目と近い目

○広い目と狭い目

○かかわりの目

 

6、面接の段階での留意点

1) 来談までのクライエントの心理

 

2) 受理(インテーク)面接、あるいは初回面接

 

3) 初期の面接

 

4) 中期の面接

 

5) 後期の面接

 

 

7、事例

ケース1 ギャンブル依存から低空飛行一離陸

妻から申し込み,他人事化,負の予期(止められない堕あろう,直らないだろう)

3つの絵(立派な家,アパート,一人の私)一理解とねぎらい,アパートに息を潜める子供を抱きしめる,感動の余韻で結ぶ。

子供時代の不安,恐怖,父親・社会不信,決意(負けないぞ)

子供時代のClが今のClを抱いて云う,今のClから父へ云う。感動的決心

行動調整,決心を公開,自己目標,方法の点検と支援,肯定的自己評価をバックアップ

過去の自分の決心からの分離,自分らしく生きる価値の自覚,習慣の課題の大きさ

ケース2 子の勉強の悩み()の背景に見えたもの

子どものために受験への傾斜,子の勉強嫌い,反発、効果のない説得「今勉強しないと後悔するよ」,其の言葉誰に?反省するが行動は変りにくい。

子になって気持ちを親にぶつける。 行動調整の指導, 母親の変化

 

ケース3 云うことを聞かない子供 (つい折樫してしまう私)

子供のことを話す, 努力を話す, 応えてくれない子は許せない

許せないのは誰?  , むしろ自分自身では?,

泣いているのは誰?  子供, でも私,

何とかしなくてはならないのは? 子供でなく, 夫でなく, まず自分

ねぎらい (自分から逃げずに真剣に何とかしようとしているね)

 

演習

1) はじめまして(出会いの体験)

カウンセリングの土台はクライエントとカウンセラーの人間関係

ともにいる、心(感性、考え、感情)が触れ合う、コミュニケートする

2) 表情・動作による交流(非言語的コミュニケーション;NVC)ゲーム

3) 反射,言い換え,要約ゲーム

  わかるよーといって

  願いを聴いた、なれたらいいねという気持で聴く 

  

  逐語録 クライエントに変身してみる 

 

4) 同化(地を這う虫の目)と異化(鳥瞰する鳥の目)の体験

  

AさんとFがまず試行,次に2人ペアで

○同じと違いの意識化

○親しい人と自分との似たところを言う(聞く),次に違うところ

○自分の過去の出来事を話す(聞く)

CO役は共通性を感じつつ聞く(事柄は違っても心理体験は共通)

次に違いを意識化しつつ聞く(感じ方が違う,自分とは別)

CO役はクライエントの動機と苦労を労い、矛盾点,疑問点を発見し,伝える

あるいは、自分との感じ方の不一致点を示す

 

話題:今の気がかり, 心配事, 悩みを話す(聞く)

5) 各種のワークを取り入れて

2人組で自己紹介、4人になって他者紹介

○遺失物ゲーム:2人の間で、次に4人班で話し手役、受容役、促進役、記憶役

順次、役割を交代してみる。(8から10分、後3分ほどフードバック)

○なってみる体験や人生コース図の体験で

○遺言状や想定書簡法で

 

<カウンセリングを深く学ぶために>

1) 何を聴くのか(心を聴く)

・心は視線や表情や姿勢に表れる(カウンセラーも)

・心は使う言葉の内容と声の響きに表れる。

・心は大宇宙(星や星座はその一面)、捉えることは無理(その上で「わかる」気持ち)

・心はいつも葛藤している、葛藤に耳を傾けることが理解の糸口。

・心は恥ずかしがり(自分ごとを避けて他人ごとに)と目立ちたがり(他人ごとにも自分を巻き込む)との二面。

・心は理屈家(理由を探して納得したい)と感覚・感情家との二面。

・心は理想や願いを求める面と現実を見る面との二面。

・心は事柄に囚われ、気持ちを忘れやすい。しかし気持ちで事柄を捉える。

・心は過去に囚われ、今と今からの近未来を見落としやすい、そして遠い未来に心を奪われる。

 

2) べからず集

・わかったふり、先回り(クライエントの心をわかってしまう?)

・傾聴そぶり

・多弁に振り回される

・安易な説得、助言(事後にいい気分になるのは誰?)

・質問に頼る

・同情(共感はクライエントの主観的世界を理解すること)

・同意(受容はそれをそれとして大切に受け止めること)

・無理な自己説得に乗る

・道徳観、価値観にこだわる、とらわれる

・自分のことは棚に上げる

・好き(嫌い)になる:(敬愛=理解、尊敬、温かさ)と混同

 

演習

人とのやり取り

鉛筆 6角形 番号 サイコロトーク

話し手(一人) 他の人は聴いてねぎらいと理解 認め 話した人が自分に優しくなれるように。

話す体験 返す体験 他の人のものが参考となる。

重い話が出た時、それに関連した事を聞く、貴方のその気持どう聴いてほしい。さあここまでの話しまとめてみてください。

 

感想

 カウンセリングとは一体何をする事なのか、何のためにするのか、人生にとってどういう意味を持っているのかという事を考えることがある。そんな時に改めてこうした基本的な学びをさせて頂くと、剣道で言う、守・破・離の守の部分、何を基本的に学習していかなくてはならないのかを明確にしてくれる。

 現実にClと相談活動を開始すると、質問、要約という技術を用いる。現実の自分の能力に直面することになる。こんなことでいいのかという不安感と悔いが残る。どうすれば向上させていけるのかと真剣に考える。そうした私のニーズに応えてくれるのがこうした基本的な学習の繰り返しとなっている。

 事例を踏まえた理論の確認、そして実習、こうした繰り返しによって、知った事を理解し納得し、実践できるように努力していく。何だか少しづつ自身が育まれていくような気がしています。